|
11 戦士の誇り 砂嵐を乗り切り、どのくらい走っただろう? 日は既に暮れていた。砂漠の夜は寒い。凍てつく風が、肌を刺した。 リュウガは固形燃料で暖を取りながら、周りの風景を眺めた。 「結局、ここに戻ったか…」 ここはマッドサンダ−の残骸前だ。 基地に到着する前に、レブラプターの大群から追い込まれた場所だ。 なぜか、この場所は安心する。 ここで命を拾ったためか?それともマッドサンダーの醸し出す威厳がそうさせるのか? 「G2の装甲、思ったよりひどくないよ? 自己修復モードで、何とかなりそう」 タイガーリリーはG2を診断していた。 せっかく守ったゾイドだ。出来る限り、ベストの状態を保ちたかった。 「ありがとう、タイガーリリー …彼女は?」 タイガーリリーは、マッドサンダーを指さした。 おそらく、背中のコックピットにいるのだろう。 リュウガは、意識を取り戻したアンジーに、全てを話した。 バレッタのこと、ヴィル少佐のこと、そして自分たちを逃がすためにおそらく相打ちに なっただろうと言うことを。 そのショックから立ち直るには時間が掛かるだろう。 今は、そっとしておくことにした。 「ねえ、リュウガ?これからどうするの?」 「取りあえず、この砂漠から脱出だ。 後のことは何とでもなるよ」 「…そうじゃなくて、彼女よ」 呆れた風に、タイガーリリーが言う。アンジーのことだ。 「ああ、砂漠を抜けるまでは、一緒に行動だ」 「その後は…?」 「さあ?それは、彼女が決めることだ」 「…もう決めたわ!」 アンジーが、近くまで来ていた。 アンジーの手には、対ゾイドライフルZiスコルピオンが握られていた! 「その銃は?!」 「あ、そうか。ここに置きっぱなしだったんだ!」 タイガーリリーが思い出したように言う。 「動かないで!!」 Ziスコルピオンを小脇に抱え、リュウガ達に狙いを定めた。 「弾はどうした?もう空だったはずだぞ?」 アンジーがバックパックから弾帯を出してみせる。 「古い弾だけど、保存状態はいいわ」 どうやら、この辺りに落ちていた弾を拾ってきたようだった。 「暴発の恐れがあるぞ?」 「もう何も怖くはない。もし暴発で死んだとしても、それが運命よ」 冷めた様に、彼女が言う。 「何が望みだ?」 「貴方のゾイドを戴くわ」 タイガーリリーが目をむいた。 「ちょっと、あんた? 命を救って貰ったクセに、恩を仇で返すの?」 「動かないでと、言ったはずよ?」 「いいえ、あんたの指図なんか受けないわ!」 アンジーはトリガーをゆっくり絞り始めた。 (どうやら本気だ!) リュウガは背筋が、寒くなるのを感じた。 タイガーリリーは対照的に、アンジーに食って掛かった。 「アンジーとか言ったわね? あんたの命は、2人の命を引き換えに生き残ったのよ?」 「黙れ、それ以上言うなあ!!」 「ここであんたが死んだら、2人は無駄死によ? あんたの命をどう使おうと勝手だけど、 あたしは、情けなくて涙が出るわね? こんな、根性無しを助けたんじゃ、おちおち死んでられないわよ?!」 「黙れぇ!!」 アンジーが発砲する。銃声が轟いた。 リュウガはとっさにタイガーリリーを突き飛ばし、その上に覆い被さった。 大した効果がないかも知れないが、運が良ければタイガーリリーだけでも助かるはずだ。 静寂が訪れる。おそるおそる、顔を上げるリュウガ。 そこには、すごい勢いで後ろに吹き飛ばされた、アンジーとZiスコルピオンの姿が あった。 「どういう事だ?」 「あんな、化け物銃、手に持って撃てる訳ないわ」 タイガリリーはしれっと答えた。 「じゃあ、こうなることを知っていて…」 「どのみち、痛い目を見ないと分からないでしょ?」 「…違いない」 リュウガはアンジーに駆け寄り脈を調べた。 取りあえず命に別状はない。アンジーの意識は朦朧としているようだった。 アンジーにタイガーリリーが声をかけた。 「悲しいのは分かるわ。 でもね、そこから逃げちゃダメなの。 いつか自分の哀しみが押し寄せてきたとき、その感情に押しつぶされてしまうわ。 貴方には、そうなって欲しくないの…だから」 アンジーは、泣いていた。子供のように。 「これで良いわ。少なくとも、あたし達を撃つようなマネはしないはずよ?」 「スゲエな、タイガーリリーは」 リュウガが素直に感想を言った。 タイガーリリーは、呆れたようにリュウガの顔を見て、笑い出した。 「なんだよ?」 笑う意味が分からない。 「呆れた…昔、あたしに似たようなこと言った事、忘れちゃったの?」 今度は、リュウガが、ポカンとする番だった。 その夜、タイガーリリーは、マッドサンダーからパーツをかき集めていた。 リュウガが、タイガーリリーに声をかけた。 「何をしているんだ?」 「戦う準備よ」 当然でしょ?とタイガーリリーは答えた。 「まさか、深紅のアイアンコングか?しかし奴は…」 「あの程度でくたばるなら、苦労はしないわ」 あの砲撃の中でも耐え抜き、ゴジュラス・ジ・オーガですら歯が立たなかったのだ。 酷な言い方をすれば、ハンターが自爆したところで致命傷を与えたとは思えなかった。 「手伝うことはないか?」 「ええ、山ほどあるわ!あんたの相棒に付けるパーツよ」 メモに書かれた材料だけでも大した量だ。 「…あの、さっきはごめんなさい」 アンジーがおずおずと近寄ってきた。 タイガーリリーは振り向かない。背中を向けたまま作業を続けていた。 「あの、許して欲しいなんて言えないわね…でも、わたし」 「あのねえ、ぼさっと突っ立てないで、あんたも手伝ってよ?」 「えっ?」 「あのアイアンコングを倒すのよ。あんたにとっても敵でしょ? 手伝ってくれるんでしょ?」 「あ、はい。お手伝いさせてください!」 やれやれとリュウガが肩をすくめ苦笑する。 「不器用な奴…」 「それはお互い様!」 そんな、たわいないやり取りがなんだか楽しくて、3人は声を上げて笑った。 早朝近くになって、カスタマイズは終了した。 朝日に、G2の雄志が栄える。 「きっと、このマッドサンダーが力を貸してくれるわ!」 左手には、“ハンディーシールド”。 これは、マッドサンダーの装甲から作り上げた。 スパイクが並び、打撃武器としても有効だ。 右手には、“パイルバンカー”。 マッドサンダーの動力シャフトを流用している。 「機材がないので、先端を尖らすのに苦労した」とタイガーリリーが言う。 強度は、マッドサンダーの中でも一番頑丈なパーツだという。 破壊力は折り紙付きだろう。ジャンクのパーツを利用して伸縮できる機巧を作り上げたのはタイガーリリーの腕の良さだ。炸薬で、一撃必殺の攻撃が可能だ 背中には、“マグネッサードライブ”。 マッドサンダーのマグネーザー回路から作り上げた、タイガーリリー自慢の一品。 マグネッサーとは、本来飛行ゾイドプテラスの羽に装備されている装置のことだ。 惑星Ziの地磁気に反発し、揚力を得る事が出来る。 この背びれ一枚が、瞬発力を高める効果があるという。 格闘戦では、間合いの取り方ひとつが、大きく勝敗を分けるだろう。 この状況では有り難い装備だった。 砂漠に朽ち果てたゾイド達が、G2に力を与えてくれた。 それは同時に、歴戦の戦士達の誇りを受け継ぐ事でもある。 彼らの魂は、G2の中で再び燃え上がることだろう。 現代のグラディエーターは、砂漠という名の闘技場で雌雄を決する! ゴジュラスグラディエーターはアサルト装備を施され、“A2”との決戦を挑む!! もはや逃れることが出来ない運命に、真っ向から立ち向かって行くのだった!! |