9 宿敵現る!!


 帝国軍の奇襲は前半、共和国を圧倒していた。
 だが、“ある時”を境に共和国軍はその力を盛り返してきた。
 “G2”の起動。それは共和国軍の志気を著しく高めた。
 今度は帝国軍が危うい。時間が経てば立つほど、攻める側は不利になってゆくものだ。
 「…ふん、ハンターごときでは、この程度か」
 ヴィル少佐は“A2”の中で吐き捨てるように言った。
 アンジー達による戦闘データーはハンターを通して、全てヴィル少佐の元に届いていた。
 (もとより、ハンター部隊など消耗品。
  うわさのG2を拝めたのだ。
  儲けたと思った方がいいかも知れない)
 『少佐!前線を維持できません!!
  見たことがない、砲撃用ゾイドが現れました!!』
 「ほう?G2以外にも、新型か…よし、私が出よう!!
  反乱軍め!このヴィルと“A2”を楽しませてくれよ…」
 ヴィル少佐は不敵に微笑んだ。
 “A2”と呼ばれたアイアンコングが、戦場に駆けだして行った。
 
 一方、共和国軍はG2の起動がきっかけとなり、その志気が高まっていた。
 マキシミリアン中佐は、自らゴジュラス・ジ・オーガに乗り込み、戦闘の指揮を執っていた。
 通常の20倍の性能を誇る、ゴジュラスのカスタム版である。
 「よし、“フレイムセイル”を出せ、一気にケリを付けてやる!!」
 大きな背びれが特徴のエダフォサウルス型ゾイド。
 元は帝国軍ゲータを接収し改造をくわえたモノだ。
 電子戦機だったゲータとは違い、フレイムセイルは砲撃戦仕様だ。
 十数機のフレイムセイルが配置につく。
 背びれを90度旋回させ、そのまま前に倒す。
 すると、背びれがパルスレーザーガンと4連インパクトカノンの砲座に早変わりだ。
 「撃てー!!」
 マキシミリアン中佐の号令で、砲撃戦が始まった!
 集中砲火を浴びせられ、さしもの帝国軍も防戦一方だった。
 「よし、このまま押し切れ!!この戦、勝てるぞ!!」
 マキシミリアン中佐の言葉に嘘はなかった。共和国軍の誰もが勝利を信じていた。
 その時だ、深紅のアイアンコングが戦場に現れた!!
 「新手か?!」
 アイアンコングは、自らを誇示するかのごとく、両の拳で胸板を叩き始めた。
 ドラムロールという行動だ。アイアンコングを始め、ゴリラ型ゾイドに多く見られる行為だ。
 戦いの前の高揚効果があると言われている。
 だが、この視界の通った遠距離では、的にしてくださいと言っているようなモノだった。
 マキシミリアン中佐は、目標をアイアンコングに定め一斉砲撃を行った。
 頑強な装甲を持つアイアンコングも、この砲撃の前には手も足も出まい。
 誰もがそう思っていた。
 
 「ふっ…」
 ヴィル少佐は、自分の眼前に迫る弾道を避けようともしない!
 「少佐!回避してください、少佐!!」
 部下達が悲痛な叫び声を上げる。
 全弾が命中、ヴィル少佐は即死。
 誰もがそう思っていた。
 
 共和国も帝国も、その両陣営の兵士が信じられないものを見た。
 「竜巻…、竜巻がアイアンコングに!!」
 マキシミリアン中佐はそう言うのがやっとだった。
 深紅のアイアンコングを取り巻くように、竜巻が発生している。
 「こんな事が、起こる訳がない!!」
 竜巻がだんだん大きく、太くなりつつあった。
 
 「少佐、応答してください。少佐!」
 帝国軍も必死に呼び続ける。
 「な、なんだこの砂は!!」
 (砂が、我々のゾイドを“喰っている”!!)
 衝撃の事実に、帝国の兵士は戸惑った。
 この砂漠、特有のゾイド喰らい!!
 帝国の兵士は、誰もこの事実を“知らなかった”のだから!!
 
 「ふっはははははは、はあっはっはっは!!!」
 霧が晴れるように、砂塵が消えてゆく。
 そこには深紅のアイアンコングが、“無傷”で立っていた!
 「信じられん!?ゾイド喰らいの中で無傷だと…
  いや、まさかゾイド喰らいを、コントロールしていたのか?!」
 「…そのまさかさ、反乱軍の諸君!」
 マキシミリアン中佐の叫びに、アイアンコングが答えた。
 「くそう!!」
 ゴジュラス・ジ・オーガのロングレンジライフルが火を噴く!!
 アイアンコングを直撃、したはずだった。
 アイアンコングは、再びドラミングを開始する。
 それに呼応して、ゾイド喰らいが集まり、砂のカーテンを作り上げる!!
 (ショックカノンも、実弾も、あの砂は遮ってしまうのか?!)
 「防御だけではないよ?
  このようにね、攻撃も出来るのさ!!」
 竜巻の規模が大きくなる。みるみるその範囲を拡大し、フレイムセイル部隊を
飲み込んでゆく!!
 「ゾイド喰らいの恐ろしさを、その身を持って味わい賜え!!」
 砂が、全てのゾイドに襲いかかる!!
 小型のフレイムセイルなどはひとたまりもない。
 次々と、砂漠の砂に変わっていった!
 「くっ、敵も味方もお構いなしか!!これが帝国軍のやり方か!?」
 先ほどの様子では、味方機に撤退命令は出ていない。
 マキシミリアン中佐の判断通りであれば…。
 「彼らの血肉は、この究極兵器“シュトルムウントドラング”の糧となった。
  無駄死にではないよ…むしろ名誉なことだ!!」
 「そんな勝手な理屈が通るかあ!!」
 ゴジュラス・ジ・オーガがアイアンコングに突進してゆく!
 大型のゴジュラスとは言え、ゾイド喰らいの影響の中では、その性能も著しく
低下していた。
 (長くは、保たん!!
  いっさいの砲撃が封じられたのなら、格闘戦を挑むのみだ!!
  懐に入ってしまえば、勝機がある!!)
 マキシミリアン中佐の、戦士のカンがそう伝えていた。
 深紅のアイアンコングを、砂塵の中から探すのは容易なことだった。
 「丸見えだ!!」
 キラーバイトファングで、勝負を挑むゴジュラス・ジ・オーガ!!
 (ハンマーパンチをかわしてしまえば、ただのでくの坊だ!!)
 アイアンコングは、その太い腕でハンマーパンチを繰り出した。
 1発目が、空を切る!
 (見切った!)
 2発目を、ゴジュラス・ジ・オーガのクラッシャークローで受け流す!
 (終わりだ!アイアンコング!!)
 “3発目”が、コックピットをかすめた!
 「バカな!!
  2本の腕を、回避したはずだ!!」
 “4発目”の手刀が、ゴジュラス・ジ・オーガの喉に突き込まれた!!
 ゴジュラス・ジ・オーガの口から、ゴボゴボと盛大にゾイドリキッドをはき出された。
 赤黒く染まった砂の上に、最強のゴジュラス・ジ・オーガが崩れ落ちる!!
 「ふん、“A2”の名は、伊達では無いのだよ?
  さらば、我が仇敵よ!
  この砂漠が、貴様の墓標だ!!
  寂しくはない、G2も今すぐに後を追わせてやる!!!」
 砂嵐が、ゴジュラス・ジ・オーガを埋もれさせていった。
 「リュウガ…逃げろ、G2を守ってくれ!!」
 後には深紅のアイアンコングがただ1体、何事もないように立っているだけだった。
 A2はその光景を悲しげに見続けていた。
 顔に掛かったゾイドリキッドの返り血が、まるで涙のようだった。


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