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14 旅立ち、そして… 幾多の苦難を乗り越え、リュウガ達はこの砂漠を後にした。 砂漠を抜けて緑が見え始めた頃、畑や人の集落が見え始めた。 遙か向こうに村が見える。 楽しそうな声が聞こえてくる。 (そうか、もう祭りの季節なんだなあ) 戦いに疲れた今のリュウガ達には、お祭り騒ぎがまぶしく写った。 アンジーは、村が見つかったら降ろしてくれと頼んだ。 リュウガは黙ってそれに従った。 タイガーリリーは、何か言いたそうだが、何も言えなかった。 「ここで、お別れするわ。この辺りじゃ、共和国軍が五月蠅そうだし」 「ああ、元気でな?」 「ホントに行っちゃうの?」 アンジーはクスリと笑うと、タイガーリリーの手を取った。 「貴方には、本当に感謝しているの。 あのままじゃ、私は立ち直れなかった。 貴方の言葉が無ければ、今の私はいなかったわ」 アンジーは、リュウガに向き直った。 「凄かったね!あんたやっぱり、ただのゾイド乗りじゃないよ!!」 「いや、俺は何もしていない。 声が聞こえたんだ…」 「声?」とアンジーとタイガーリリーがハモる。 「いろんな声さ。グラディエーターの声。タイガーリリーの声。アンジーの声。 マキシミリアン中佐に、もっとたくさんの声が…」 「そう、あたしの声、届いたんだ」 タイガーリリーがはにかむ。 「でも、一番は父さんの声だ! 『…いつか、おまえがゾイド乗りになったのなら、 ゾイドの鼓動に耳を傾けろ。 この音が聞こえてる限り、おまえは決して負けはしない!』ってね」 「ゾイドの鼓動?」 アンジーが聞く。 「相棒のゾイドの鼓動だ! 俺にとってはグラディエーターの、かけがえのない相棒の鼓動さ!!」 「そう、だから貴方は立ち上がれたのね」 まぶしげにリュウガを見るアンジー。 「…あたし、一番じゃなかったんだ…」 ぼそりと呟くタイガーリリー。 「もう行くね?今までありがとう!!」 アンジーが、村へと駆けだしてゆく。途中で立ち止まり、リュウガ達に手を振る。 リュウガとタイガーリリーも負けずに手を振った。 「あ、そうだ。忘れ物!」 アンジーがリュウガに駆け戻ってくると、不意にその唇を奪った。 「ああああああああああああ!!!!!!!」 「……………」 タイガーリリーが絶叫し、当のリュウガは放心状態。 アンジーはぺろっと舌を出して、アンジーに「ゴメンね?」と言うと、また村に 駆けだしていった。 そのまま、アンジーは村の中に消えていった。 「リュウガ?」 「ああ?」 タイガーリリーの問いにも、リュウガは上の空だった。 「だいっきらい!!!」 タイガーリリーのケリが、リュウガの向こうずねに炸裂した! 「うごおおおおおお!!!!」 さすがに、ゾイドの力を持つ身体でも、ここは痛かったようだ。 “ゴオォォォォフォフォフォフォ” G2は、その身体を大きく揺すって笑っていた。小山が揺れたような感じだ。 「おい、相棒?何笑ってんだよ?」 「へん、あんたなんかもう知らない!!」 タイガーリリーも、どこかに消えてしまいそうな雰囲気だ。 「ま、まてよタイガーリリー?」 「なによ?ほっといてよ!!」 むくれるタイガーリリー。こういう表情は悪くない。年相応に可愛らしい。 「なあ、機嫌なおしてくれよ?せっかくの祭りだし、驕るぜ?」 「…ねえ?」 「ん?なんだ?」 「あんたにとって、あたしって何なの?」 タイガーリリーは、上目使いでリュウガに聞いた。 「あん、そりゃ決まってんだろ、大切な…」 「大切な!?」 身を乗り出す、タイガーリリー。 「パートナーだ!!」 リュウガの答えに、ガクッとなるタイガーリリー。 「リュウガなんて、嫌い嫌い、だあいっきらあい!!」 「あ、おい、待てよ?置いてくなよ!!」 「着いてくんなあ!!」 2人も祭りの中へと消えていった。 その姿を見送るG2。 平和な光景を、ただ眩しげに見ていた。 (俺は兵器。だが、リュウガは俺を相棒と言った。 いつかA2のように、俺もリュウガを殺してしまうのだろうか?) G2は、自分へと問いかけた。その答えは、今すぐには見つからない。 (その答えが見つかる日まで、俺はリュウガに着いていく!!) それがG2の答えだった。簡潔でいかにもリュウガらしい。 彼の相棒らしい答えだった。 当たり前の生活、当たり前の幸せ。 だが、それは誰かの犠牲の上で成り立っているモノかも知れない。 リュウガとタイガーリリーは、つかの間の休息を楽しんだ後、また戦場に戻るだろう。 “人とゾイドが仲良く暮らす、そんな世界が来ればいい” それは決して夢ではない。 胸の内にある鼓動に気づいたなら、他の誰かの鼓動にも気づくだろう。 生きている者同士が、分かり合えないはずはないのだから。 リュウガとタイガーリリーのような若者がいる限り、その希望は消えることはないだろう。 この局地戦の後、共和国には新型ゾイド、ゴジュラス・グラディエーターシリーズが 登場する。 戦争の展開はこれにより、膠着状態が続くことになる。 また、新たな兵器が、次の悲劇を生むのかも知れない。 たとえそうだとしても、決して諦めたりしないで欲しい。 開けない夜はないのだから。 明日を信じて、今を強く生きる事を忘れないで欲しい。 少なくともリュウガとタイガーリリーは、そう信じているに違いないのだから。 THE END |