ゾイドを愛する全ての人へ
かつてゴジュラスと共に戦った戦士達に
この作品を捧げます。

ゴジュラスグラディエーター外伝
「伝説 再び!!」

 

1 想い出


 「うわぁ…」
 少年は言葉を失った。それはまるで小山のように少年の前にそびえていた。
 神像のように神々しく、伝説の幻獣のごとく猛々しい、冷たい鋼に、命の炎を宿した異形の偶像は“ゾイド”と呼ばれるメカ生命体であった。
 「ゾイドは好きか?」
 男は少年の肩に手を置いてそう聞いた。少年の答えは決まっていた。
 「うん、大好きだ!」
 簡潔だが力強い、それが少年の答えだった。
 男は満足そうに頷く。
 「こいつは、ゴジュラスと言ってな」
 ゴジュラス!そうか、ゴジュラスか!少年は男の言葉を何度も心の中でつぶやいた。
 (気に入った!!)
 少年は「にかっ」と笑った。
 「俺の一番の相棒なんだ」
 男は誇らしげに自慢する。まるでとっておきのオモチャを見せるかのように。
 そのオモチャは、身体に様々な兵器を装備していた。
 そう、ゾイドを殺し、人をも殺す。こいつは兵器だ。それもとてつもなく強大な!
 少年はこの歳まで、兵器に触れたことがなかった。
 ほんのひととき訪れた平和がはぐくんだ子供だ。兵器のない世界の新たな世代。
 少年は兵器が嫌いだった。銃は人を殺す。それはいけないことだと、幼い少年は知って
いた。だから、ゴジュラスが怖くなった。
 “ゴォガァァァァァァ!!!”
 小山が吼えた。少年は飛び上がる。
 (怒ったの?!)
 「はははっ、ゴジュラスのヤツ。おまえを気に入ったようだぞ!」
 男は笑った。くしゃりと少年の頭を撫でる。不思議と、怖くは無くなった。
 「こいつ、噛みつかない?」
 「おまえは敵じゃない。それをゴジュラスは知っているからさ」
 「なぜ?」
 「おまえは俺の息子だから。ゴジュラスにはそれがわかるのさ」
 男は少年を肩車にして、ゴジュラスに近づいた。
 「ご覧、ゴジュラスは見ての通りの兵器だ。
  でもね、こいつはとっても優しい良いヤツなんだ」
 「本当?」
 「ああ、そうさ。戦争さえなければ、ゴジュラスも自由に生きることが出来る。
 俺はね、人とゾイドが仲良く暮らす、そんな世界が来ればいいと思ってる。
 …馬鹿げてるか?」
 少年はぶんぶんと首を振った。勢いで落ちそうになる。男は笑った。
 「そうか!おまえは良いゾイド乗りになれるな!」
 男は肩車から少年をおろすと、真顔で少年を見つめた。
これが“漢”の顔だと気づいたのはずっと後のことだ。
 「いいかい?ゾイドは決してただの兵器なんかじゃない。
 人とゾイドの心が通って、初めて本当の力が発揮されるんだ。」
 「本当の力?」
 「そうだ、人とゾイドが生み出す無限の可能性がそこにある。
 人とゾイドを越えた先には、きっと新たな世界が待っているはずだ
 そのために…」
 男はゴジュラスと向き合う。
 「力を貸してくれよ?相棒!!」
 “グァオォオォォォォォォン!!!!”
 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…
 ゴジュラスのうなり声の後、かすかに聞こえるこの音は…。
 「ゾイドの鼓動だ。
 …いつか、おまえがゾイド乗りになったのなら」
 男が微笑みながら言う。
 「この音が聞こえてる限り、おまえは決して負けはしない!」
 少年は男の言葉を心に刻んだ。
 
 そして、その言葉が、男の遺言となってしまった。
 物言わぬ、一つの固まりになって、相棒と共に還ってきた。
 少年はひとりぼっちになっていた。
 
 平和な刻は終わりを告げ、新たな戦乱の火ぶたが切って落とされた。
 戦いは果てしなく続いた。多くのゾイドと兵士達が死んだ。
 時は流れ、いつしか少年は大人になっていた。
 男と同じ背になり、男と同じゾイド乗りになった。
 帝国と共和国の関係は泥沼となり、お互いが決め手に欠ける膠着状態が続いている。
 人々の願いもむなしく、戦争はさらに厳しさを増していった。


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