ワルキューレ


 【1】VCa5年8月15日 禁制領域(シバルバー)AM03:28

 まだ明けぬ闇の帳は絶望の暗幕。たった一人で破壊神の幻像と向き合うSGV−417−Iと一人の女性は時の流れの遅さを呪いながら吠えた。
「いい加減、して欲しい。いえ、いい加減にしなさい!」
女性のたどたどしい言葉遣いの代わりに彼女が普段使用する言語に切り替え、鋼鉄の如く、強靭な意志を秘めた声が電脳虚数空間と現実の境界線に存在する空間に響く。
 調伏巫女と称されるVRパイロットはバイザーごしには破魔の細工が施されたと揶揄される銀色の瞳がヤガランデ幻影の巨大な肩に腰掛ける幼女に怒りの視線を向けている。
それは恐らく、偽りの姿。
 そいつの姿は可憐な幼女のモノだが、その雰囲気はある種の破壊衝動に因る狂気に包まれていた。
「お姉ちゃん、面白いよぉ。今までこの電脳虚数空間にまで入り込めた人はお姉ちゃんが初めて。みんな、最初の一撃で死んじゃって遊んでくれなくなるのぉ」
幼女ガラヤカが無邪気な微笑みを浮かべる。
「それはおいたが過ぎるんじゃないの? 加減てものを知るべきよ」
調伏巫女いや、ユウヒ・サイナ少尉はいつもと全く違う口調で言い放った。
 だが、目の前に幻影とは言え、2体のヤガランデを相手にしての戦闘は苛烈を極め、精神的にも肉体的にも限界は近づいている。
「ふっふっふ。あたしにだって、お姉ちゃんの強さの理由くらい、知ってるよぉ。
あたしを苛める為に作らせたその特別なエンジェランとお姉ちゃん自身が特別に作られた人間だからだねぇ。そうでしょう?」
ガラヤカの幻像たる幼女は得意げに笑みを浮かべて、自慢げに語る。
ユウヒは答えない。いや、正確には答えられなかった。常時、ヤガランデから放出される精神を貫く波動に耐える為にはなるべく、喋らない方が長持ちするからだ。
 幾ら、人類以外のモノと戦う為に製造され、幾重にも精神侵食に対する防御を施された機体とは言え、完全に防ぎ切れているとは言い難い。
「マシンチャイルドとかなら、知ってるよね。パパの居所。
あたし、早くパパに迎えに来て貰いたいの。ここから出たいの。狭くて暗いし、つまぁ〜ない」
「悪いけど、プラジナー博士は名付け親だけど、私自身は会った事がない」
調伏巫女は裁判官の如く、罪人を断罪する様に吐き捨てた。
 幼女の幻像はあからさまに顔色が変化し、白から青、そして、赤へと変色する。
「お姉ちゃんもあたしを苛めるんだ。折角、殺さない様に言って上げたのに!
もう、いいよ。ぐっちゃぐちゃにして、ぶっ殺すから。そのVRごと、めっちゃくちゃにぶっ壊すから」
幼女はシャボン玉のように涙を弾けさせながら、ユウヒのエンジェランを指さした。
その健気な様子はこの手の幼女が好みの男性なら、喜んで供物になっただろう。
「笑わせてくれるね。本当に貴女は子供。貴女は最初から私を生かして返す気が無い。
それくらい、私が見抜けないと思ってるの?」
だが、小さな女性の反応は笑い声を漏らしながら、エンジェランを動かし、氷の竜を召還し、幻像のヤガランデに襲いかかる事だった。
「別に良いモン。次に来るお兄ちゃん達に聞くからぁ。
やっちゃえ! ヤガヤガぁ!」


その頃、何処とも知れぬ、秘密組織の格納庫ではトイフェリアが自分の部下である女性騎士と話して居た。
 辺りには第1世代の容姿を持つVRや第2世代のVRなどが並び立つがいずれも特別なカラーリングで統一されている。
「マイン・フューラー。ルシファー・アオゲで何か見えたのですか?」
女性騎士は最敬礼でトイフェリアいや、フェリスと呼ばれる時の容姿の彼女に問う。
「ああ。悪ガキにちょっとした折檻をしに」
「ガラヤカですか。あれはプラジナー博士の失敗作です。
あれが無ければ、ヤガランデは存在しなかったのに。そう思うと心が痛みます」
部下に背を向けたまま、トイフェリアは呟いた。
「オッペンハイマー」
「はぁ?」
思わず、間抜けな声を出す騎士に魔女は答える。
「彼は原爆を作った。後先考えずにな。それがヒロシマ、ナガサキの爆心地の結果だよ。
概してそういうモノだよ。研究者や博士と言う人種は・・・
プラジナー博士もそうだった。ただそれだけの事だ」
それを言い終わった後、トイフェリアは声を殺す様に笑った。その行いは誰かが不意に漏らした事を現実にした結果だと知れば、自分の部下はどう反応するだろうか。
「確かにおっしゃる通りです。マイン・フューラーもその体に成らずに済んだかも知れません。それに貴方様の《君》の傷も─」
「セシル」
上司の言葉に女性騎士は犬の様に全身を震わせながら、背筋を伸ばし、返事を返す。
「ヤー・マイン・フューラー」(はい、我が総統)
「私の《君》の傷は私を守った時の傷。それは男の勲章だろう? それと、他の幹部が一緒の時はフューラーと呼ぶな。楽屋裏が怖い。・・・出掛ける。後は頼む」
「ヤー・マイン・フューラー」
部下の返事を聞き届けた後、魔女は電脳虚数空間へと消えた。
「行ってらっしゃいませ」

 【2】

 魔女が他所行きの姿で現れた時、目の前の戦闘は既に結果が付き始めていた。
SGV−417−Iことエンジェランは地面に膝を付き、体を杖で支えてる。
2体のヤガランデは体の大半が穴だらけになりながらも其処に存在し、尚もエンジェランに襲いかかろうとしていた。
奥に銅像のように立つヤガランデの右肩に座るガラヤカが口を開く。
「そろそろ終わりにしようかぁ?
ヤガヤガぁ、ぐっちゃぐちゃと─」
「待ちなさい。ヤガランデを椅子代わりにして随分と豪華ね。クソガキの癖に。下らないトリックももう終わりよ」
幼女の言葉を遮り、魔女がパチンと指を鳴らす。
ヤガランデの幻像がかき消え、黒い空間だけが現れる。
ガラヤカだけが人間の幼女の姿で佇んで居た。
「アリス。どうして」
ユウヒはその時、始めてトイフェリアに気づいた様に呟く。
「貴女を電脳虚数空間に引きずり込んでVコンバータで幻影を見せてただけ。実に下らない芸。ユウ、しっかりしなさい。
これでは私が貴女と契約を結んだ意味が無いわ」
魔女は調伏巫女を自分の娘を叱咤するような声で怒鳴り、幼女を睨みつけた。
「ふっふっふ。物知りおばさんなら、パパがどこに居るか知ってるよね? 教えて」
「それはヘル(ミスター)・プラジナーの事? だとしたら残念ね。初めから、そんな人間は存在しないわ」
トイフェリアが血の滴るような酷薄な笑みを浮かべ、嘲った。対照的に幼女は顔面蒼白になり、ショックで言葉を失う。
 大人が本気で子供を苛めるとこうなると言う見本だろうか。
「嘘だぁ! 嘘だ! 嘘だぁ! どうして苛めるの?
あたしはここから出たいだけなのに。遊んで欲しいだけなのに。・・・そうだよ。お前、お前がパパをここに来れなくしてるんだぁ! ぐっちゃぐちゃになって死んじゃえぇぇぇ!」
ガラヤカの言葉と同時に2体のヤガランデがユウヒのエンジェランの前に2体の幻像が現れる。
「自分からの転写。今度は幻では無いじゃないか。ユウ、そいつは任せるから。・・・このクソガキはわたしが折檻する」
トイフェリアはデータから実体化させた斬首剣で自らの肩を斬り、腕を伝って流れ出る血で刃先を濡らす。
「それで謝るつもり? もう遅いよ」
「今のお前は結界から抜け出た言わば、端末。
その端末たるお前を倒しても本体は倒せない。
しかし、私の意志を攻撃データに変換、媒介にするモノを通して、本体にダメージを与える事が出来れば・・・ガラヤカ、お前は消去される」
魔女は一瞬で自分の体を人間状態からVRへ変換させながら、低い声で笑い声を漏らす。
「おばさん、年でしょ? 運動辛いよぉ」
ガラヤカも自分の体をVRに変換し、ロッドを構える。
「ご心配有り難う。お礼に一つ教えてあげるわ。例え、私を殺せても貴女のパパは迎えに来れないよ。私が《殺した》から」
トイフェリアは子供に向ける優しい笑みを浮かべながら、それをさらりと笑って言った。
 ガラヤカだけでは無く、ヤガランデで戦闘を始め、竜を2体召還し、それを破壊神に向けて放ったユウヒも青ざめながらも放った2体の竜をヤガランデに直撃させ、あっと言う間に1体を永遠の暗闇の中に葬った。
「ア、アリス」
「マジで許さない、死んじゃえぇぇぇ!」
ガラヤカがロッドから山なりの軌道を描くピンクの衝撃波を放ち、トイフェリアに襲いかかる。
悪魔の名を持つ魔女はそれを斬首剣から発生させた黒い衝撃波で相殺し、一気に間合いを詰め、自分が瞬時に近接攻撃が可能な圏内である100mに入り込む。
 迎え撃つガラヤカは一瞬でロッドをピコピコハンマーに変え、トイフェリアの持つ斬首剣の腹に叩きつけるが、読んでいたトイフェリアがその勢いに身を任せ、優雅に一回転、威力を流し、逆に相手の力を利用し、ガラヤカ目がけて、斬撃をたたき込む。
 ガラヤカはその威力を受け切れずに吹き飛ばされる。
「大人気ないよぉ」
幼女がいたいけな表情で抗議しようとするが、魔女は気にも止めずに斬撃を振り下ろし、胸部から腹部に掛けて斜めに裂傷が刻まれるが、それはすぐに消える。
「残念だね、おばさん。あたしは治りが早いの。若いから。
そんな事より、あたし、本気で怒っちゃったぁ。全力で殺してあげるねぇ、おばさん」
ガラヤカは先程、斬られた傷の有った箇所に触れながら、全身から光を放ち始めた。

【3】

「調伏巫女。調伏巫女て、散々、こき使う。
たまには優しい言葉の一つでも掛けてくれないの?
私はそういう言葉に弱いんだよ」
精神的に随分参っているのか、巫女は恨み節を並べながら、破壊神を睨みつけ、向かい来るレーザーを空を舞台に舞を奉納する巫女の如く、エンジェランを踊らせる様に回避し、ヤガランデの懐に潜り込む。
「抜け殻に言っても無駄・・だよね」
ユウヒはエンジェランをヤガランデの顔面まで飛翔させ、対愚の法杖に直接、氷を召還しそれを法杖に這わせ、巨大な氷の刃を精製、斜めに重力の助けを借り、それを幻像に振り下ろす。
 それは無抵抗でヤガランデを真っ二つにし、エンジェランは其処に氷の刃を取り外した法杖を差し込んで竜を召還。
ヤガランデは氷の竜をダメージ量を受け切れず、幻像は竜が入り込んだ部分から雪が溶ける様に消え去る。
「アリスは・・・」
ユウヒはエンジェランに膝を付かせながら、深い呼吸で息を整えながら、トイフェリアとガラヤカの戦う戦場を見た。

 トイフェリアは敢えてそれを阻止しなかった様に見えた。
ガラヤカの変身を。
「あたしが本気で怒ると怖いよぉ」
巨躯と呼べる体にデータ変換したガラヤカいや、ヤガランデ形態が聞こえる筈の無いズシンと大きな音を立てながら、着地した。
「じゃあ、私も力を見せてあげるわ」
バイザーの下から殺意の様に赤い光を放ちながら、トイフェリアは息を吸い込む様な動作を行い、歌声を上げる。
それと同時に不可視の波紋が魔女から発生、それは大津波の如く、ガラヤカを襲う。
「うむぐぅ。何を」
ガラヤカいや、ミニヤガランデが苦痛にのたうち回り、象の如く、巨体を激しく動かす。
 当然、トイフェリアはそれに答えず、構わず、歌い続ける。
<少しは苦しみなさい。
今まで生け贄にされたパイロット達の分も>
ミニヤガランデの頭の中だけでテレパシーの様にトイフェリアの声が大音響で反響する。
「うぐぅ。少しは苦しめ? あたしの方が痛いんだよぉ。
あたし、こんなに痛くして無いよぉ」
弱ったフリをして、油断させようとするがトイフェリアは意に介する様子は無く、ミニヤガランデに徐々に近付きながら、斬首用の剣を両手で最上段に構え、斬首を執り行う処刑人の様にゆったりと動作を行う。
<アジムやシャドウの暴れ方は予想通りなのよ。貴女が私の計画の邪魔になると困るから、暫く、おとなしくして貰うわ。
いえ、ヤガランデだけを利用させて貰う>
「嫌だぁ。あたしも外で遊ぶんだぁ!」
それまでのたうち回っていたミニヤガランデが突如起き上がり、4本の光の奔流、TFCイレイザーを放つ。
 トイフェリアは敵機の30m先を歩いている。どうにか出来る距離ではない。
「やったぁー。ざまみろ。おばさんの癖に粋がるからだぁ」
ミニヤガランデが中指を立てて、バルシリーズの様に勝利のダンスして喜びを表現する。
「あ、アリス」
今まで静観して居たユウヒ少尉は思わず、叫び声を上げる。
TFCイレイザーの発生させる電磁波のお陰でレーダー機器の調子が悪い為、トイフェリアの生死を確認出来ない。
 ユウヒ少尉のエンジェランはすかさず、しゃがみ、通常機体では2体しか召還出来ない氷竜を3体出現させ、ミニヤガランデに向かって放つ。
 ユウヒ機に搭載されるVコンバータの1.5規格の本来の能力はエンジェランの召還能力を増強する為に生み出された規格なのだが、その代価として、パイロットのイマジネーションに頼り、精神力を膨大に消耗させる。
 本来ならば、5体の氷竜を召還出来る彼女を持ってしても電脳虚数空間、ヤガランデと死闘で消耗しつくし、この結果を呼ぶ。
 召還された3体の竜はミニヤガランデの放ったTFCイレイザーに呆気なく遮られ、消滅した。
「危なかったぁ。じゃあ、次はお姉ちゃんと遊ぼうか?」
ミニヤガランデはユウヒのエンジェランに方向を向けて、笑い声を漏らす。
 だが、その笑い声は斬撃に因り、途中で遮られた。
「がぅ!? どうしてぇ? 避けられないのにぃ」
ミニヤガランデは無理やり、巨体を捻り、自分の後ろに立ち、深々と斬首剣を突き刺すトイフェリアを睨みつけた。
「磁力の影響。それに端末と本体の出力の違い」
言いつつ、トイフェリアは更に奥深くへと剣を押し込む。
「これで、勝ったと、思うなよ〜ぉ。なんちゃって、本当は端末だから、痛くも痒くも無いよ〜ぉだぁ! ばぁ〜か」
捨て台詞を吐いたと思ったミニヤガランデはケロっとした表情で嘲る。
 しかし、トイフェリアも子供の無知を冷笑するかのように佇んでいた。
<だったらこれでどう?>
ガラヤカ本体の頭に直接、響いた。同時にトイフェリアが歌い出し、剣を媒介に直接、ガラヤカに精神波をたたき込む。
 それに連鎖反応を起こし、ミニヤガランデが倒れ込む。
「おばさんに免じて、お姉ちゃんは解放してあげる。
でも、お前のお陰でもうすぐ、ここから出られるもん。
出たら、パパにお前を怒って貰うもんね!」
人間なら痛みで脂汗を掻いている状態でも、ガラヤカは負け惜しみの言葉を紡いで端末を消し、電脳虚数空間から去って居った。
トイフェリアはそれを黙って見送った後、ユウヒに声を掛ける。
「ユウ、大丈夫か?」
「アリス、早く出よう。持たない」
トイフェリアは息も絶え絶え状態のユウヒのエンジェランの左肩を掴んで定位リバースコンバートを行い、電脳虚数空間より離脱した。

 【エピローグ】

 定位リバースコンバートを行ったトイフェリアが現れた場所は旧日本国東京だった。
既にこの電脳世界では人の住まない聖地の様に扱われる場所となった為に人間は誰ひとりとして居ない。この二人を除けば─
「アリス、先程、ガラヤカに嘘を言ったでしょう?
本当はVアーマーを使用して防いだんだよね?」
自分のエンジェランから降りて、大きな石を椅子代わりに座っているユウヒ少尉が呟く様に言った。
「・・DNA将校は通常では考えられないその装甲に恐怖した。
ドルドレイが初めて出た時の話。それを応用して見たのよ。
Vアーマーに出力を回して斜めに角度を付けた障壁を生み出し、爆風や熱、衝撃を防いだ。簡単な事」
人間状態、親しい者に見せる姿に戻ったトイフェリアの返答にユウヒは言葉を失った。自分のエンジェランに第1プロダクツの廉価版と言える1.5規格では不可能だろう。
「黙り込む事じゃないでしょう。ヘル・プラジナー作のオリジナルVRなら、不思議な事じゃないでしょ。
それより、・・・アリスか、懐かしい呼称ね。マシンチャイルドの前身、強化案の実施の時、貴女の受け持ちである私の名前が発音出来なくて、困って居た貴女に私が自分で言った呼び名。
もう、あれから、14年も立つのね」
左手で左目を被いながら、女性は笑った。それは焦燥とも怒りでも無いように見えた。
「《彼》が言ってたよ。《アリスは変わってない》て、だから、私も思う。
運命は残酷だって。貴女は優しいままのアリスなのに。世界を滅ぼそうとしてる」
ユウヒはヘルメットを抱えながら、押さえ切れなかった涙を右手の甲で強引に拭った。
 その光景を彼女の部下が見れば、目を飛び出して、驚いただろう。
「私の《望み》は貴女には止められないわよ。例え、FR−08の総帥殿でもね」
茶化す様にトイフェリアは言った。
少尉にはそれが酷くせつなくなり、また、涙を零す。
「ユウ、泣くんじゃないの。昔から貴女はそうだったね。感情に出る。だから、いつもポーカーフェースのフリをしてた」
トイフェリアと呼ばれた魔女はその瞬間だけ、0プラントの才媛と呼ばれた頃の優しい表情に戻り、ユウヒは子供の頃に戻って居た。
「でも、私は貴女の望みを叶えられると困る。
だから、協力できない」
「はぁははは。別に良いじゃない。私が行おうとしてる事はこの世界の、いえ、この狂った電脳暦の世界の破滅なのだから。
当然の行為よ。一応、養母と言えども親の責任は有るからね。
理解はしてるわ」
すぐに部下に見せるポーカーフェースに戻ったユウヒ・サイナにトイフェリアは笑い、真剣な表情で空を見た。
 その視線の先にはリヴィエラ級の戦艦がこちらに向かって進み、その甲板ではホワイトフリート所属らしいVRが発進準備を進めてる。
「そろそろ行くわ。小娘(リリン)が貴女を禁制領域(シバルバー)に行かせた理由くらいは考えるまでも無い。私を呼び寄せる事と、ガラヤカと潰し合わせるのが目的なのだから。その分の報復はしておかないと、余計な所にしわ寄せが来ないようにね」
「飛んだとばっちり。・・・どう言えば、良い、思う?」
「記憶を調べられる前にアイスドールに頼んで逃げ出すのは?」
いつもの口調に戻ったユウヒの問いに魔女はろくでも無い事を言い出す。
「知り合いに抜け道、頼むから、平気。それと、アリア、元気してるから」
呆れて、溜め息を吐くユウヒを尻目に笑いながら、悪魔の名を持つ魔女は消えて行った。
「運命は残酷だよ。本当に」
調伏巫女は風にクリーム色の長髪をなびかせながら、神を呪う様に呟いた。


【ワルキューレ】完


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